法人営業で培ったコミュニケーション力や提案力は、BtoB以外の多彩なキャリアへと応用可能です。
本記事では、「顧客志向」「数字管理」「プロジェクト推進」などの汎用スキルを活かしつつ、年収アップや働き方改革にもつながるキャリアパスをご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
法人営業経験者の転職市場動向と求められるスキル

まずは法人営業経験者の平均年収や求められるスキルを見ていきましょう。
法人営業経験者の平均年収・求人動向
2025年最新調査によれば、20~30代の法人営業経験者の平均年収は約500万~700万円で、管理職への登用やスペシャリストとしてのキャリアを歩むことで年収800万円以上を狙える求人が増加しています。
(出典:TOKYO PORTFOLIO「Average Salary in Japan (2025 Research)」)
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)やSaaS(Software as a Service)企業を中心に、「対顧客向けの導入支援」「契約管理」といった領域での採用ニーズが急拡大しています。
転職市場で評価されるスキルとは?
- コミュニケーション力
多部門・他社担当者と迅速に合意形成を図る力が重宝されます。
また転職後の人脈形成に困らないため、必須のスキルと言えるでしょう。 - 提案力・交渉力
法人営業経験者は契約書レビューから価格交渉まで、一連の商談プロセスで即戦力となります。 - 数字管理
KPIの設定・現状分析力は、マネジメント層や事業部門でも高く評価されます。
20~30代法人営業職の平均年収は500~700万円で、DX/SaaS企業を中心に「顧客導入支援」「契約管理」領域の採用ニーズが急拡大中。コミュニケーション力・提案力・数字管理力が市場価値を左右します。
法人営業職からのキャリアパス10選

以下の10職種は、法人営業経験者のスキルをダイレクトに活かせる代表的キャリアパスです。
各職種の平均年収目安や業務内容も併せてご覧ください。
No. | 職種 | 主な業務内容 | 平均年収目安(東京) |
1 | カスタマーサクセスマネージャー | 導入後フォロー・顧客満足度向上・更新促進 | ¥9,000,000~¥10,200,000 |
2 | アカウントマネージャー | 既存顧客の深耕営業・リピート施策 | ¥7,000,000~¥8,900,000 |
3 | ビジネスデベロップメント | 新規市場開拓・パートナー開拓 | ¥8,000,000~ |
4 | プロダクトマネージャー | 製品企画・要件定義・開発チームとの調整 | ¥8,000,000~¥9,500,000 |
5 | マーケティング(デジタル/フィールド) | リード獲得戦略立案・キャンペーン運用 | ¥5,000,000~¥8,000,000 |
6 | コンサルタント(戦略/IT) | 業務改革提案・BPR支援・システム導入コンサル | ¥5,500,000~¥8,000,000 |
7 | 営業マネージャー | チームマネジメント・KPI設定・育成 | ¥8,000,000~¥10,130,000 |
8 | カスタマーサポート | 問い合わせ対応・FAQ整備・技術的な橋渡し | ¥4,500,000~¥6,000,000 |
9 | 人材育成/研修企画 | 社内研修プログラム設計・講師・eラーニング企画 | ¥5,000,000~¥7,000,000 |
10 | 起業/フリーランス | 自身のネットワークを活かしたBtoB向けサービス提供 | — |
各キャリアパスの特徴と必要スキル
ここからは各キャリアパスの特徴と必要なスキル、メリットやデメリットをまとめました。
1. カスタマーサクセスマネージャー
仕事内容
カスタマーサクセスマネージャー(以下、CSM)は、サービス導入時のPoC(実証実験)から、日々の運用支援、アップセル・クロスセルの提案、解約防止を目的とした満足度調査といった顧客対応全般を担います。
特にSaaS企業やITベンダーにおいては、導入後の顧客継続率(チャーンレート)を左右する重要なポジションとされます。
必要スキル
- 顧客折衝力:課題ヒアリング・期待値調整・エスカレーション対応を一手に担う
- 問題解決力:技術的なトラブルや仕様に関する問い合わせを的確に解消
- データ分析スキル:利用状況や顧客満足度などをKPIとしてモニタリング
メリット
- 営業経験を活かしつつ、顧客の「成功体験」にコミットできる
- 数値に基づいた成果評価(継続率、LTV)で実力が可視化される
デメリット
- 24時間365日体制でのサポートが求められる業界もあるため、ワークライフバランスが崩れる可能性がある
- 顧客との接点が多いポジションであるため、ストレスが溜まりやすい
2. アカウントマネージャー(既存深耕営業)
仕事内容
アカウントマネージャーは、既存顧客の関係維持とビジネス拡大を目的とする営業管理職です。
単なる営業活動にとどまらず、顧客内のキーマンと中長期的な信頼関係を築きながら、継続的な案件受注やクロスセル、新規部門への展開を図ります。
必要スキル
- 信頼構築力:担当者(キーマン)との定期接触、業務理解、課題共有を継続的に行う
- 提案力:顧客の潜在ニーズを引き出し、総合的なソリューションを提示
- プロジェクト推進力:複数部署を巻き込む場合の社内調整・工程管理
メリット
- 長期的な顧客関係の中で「パートナー」として認識されるやりがい
- 既存顧客による確度の高い案件が多く、受注率が安定している
- 年間売上高に占める割合が大きく、ニーズの深堀りも含めて戦略的思考力が鍛えられる
デメリット
- 成果が出るまでに時間を要する場合がある
- 関係構築型営業のため、属人的になりやすく、担当変更のリスクが存在する
3. ビジネスデベロップメント(新規事業・経営企画)
仕事内容
ビジネスデベロップメント(BizDev)は、企業の成長戦略を牽引するポジションです。
市場・競合分析を通じて新たなビジネスを立ち上げ、提携交渉、パートナー開拓、新サービスの立ち上げなど、従来の営業とは異なる「ゼロから一」を生み出す業務を担います。
必要スキル
- 市場分析力:市場規模、競合動向、トレンドを冷静に把握
- 戦略立案力:経営戦略と連動した提案・企画の構築
- ネゴシエーションスキル:他社との提携・交渉など、非価格競争の折衝力
メリット
- 経営層との距離が近い環境で働くことで意思決定に関与できる
- 新たな事業を創造する経験は、起業や副業などに活かすことができる
- 手腕が評価されれば、昇格・昇給スピードも早くなる
デメリット
- 成果が出るまでの不確実性が高く、数ヶ月〜年単位の長期戦が基本
- 経営層との距離が近い反面、プレッシャーを感じることが多い
4. プロダクトマネージャー(PM)
仕事内容
プロダクトマネージャー(PM)は、プロダクトの価値最大化を担うポジションです。
担当者の課題抽出から機能要件の定義、開発チームとの仕様調整などライフサイクル全体に関与します。
営業経験者がユーザー視点を活かして活躍する例も多いのが特徴です。
必要スキル
- 要件定義力:顧客の声を仕様に落とし込むロジカルな思考力
- 社内調整力:開発・営業・マーケなど複数部署を巻き込む推進力
- 分析力:ユーザーデータやKPIに基づいた改善提案力
メリット
- 顧客課題に深く入り込む力が営業経験と親和性が高い
- 自身の関わったプロダクトが形となって世に出る達成感がある
デメリット
- 開発に関する知識や専門用語への理解が必須(未経験の場合は壁になりやすい)
- 成果の可視化が中長期になりがちで、短期評価されにくい
5. マーケティング(デジタル/フィールド)
仕事内容
マーケティング職は、見込み顧客(リード)の創出から育成(ナーチャリング)、成約率の向上までを担当します。
デジタルマーケティングではSEO・広告運用・CRMなどを担い、フィールドマーケティングでは展示会・セミナー等のオフライン戦略から顧客との接点を創出します。
必要スキル
- 分析力:Google Analytics、MAツールなどの活用
- 訴求力:ペルソナ設計〜コピーライティングまでの思考設計力
メリット
- 営業出身者なら「どんな訴求が刺さるか」が感覚として理解できる
- 広告やPRなどクリエイティブな領域へのキャリア展開も可能
- データドリブンな評価で、数値による成果可視化が可能
デメリット
- 業界用語やツール習得に初期学習コストがかかる
- 売上に直結しにくい施策も多く、評価制度が曖昧な企業も存在
6. コンサルタント(戦略/IT)
仕事内容
コンサルタントは、クライアント企業の課題解決を支援するプロフェッショナルです。
戦略コンサルでは経営層と連携した意思決定支援、ITコンサルでは業務フロー改善やシステム導入支援が中心です。
法人営業出身者が提案型アプローチをそのまま活かせる分野といえるでしょう。
必要スキル
- 論理的思考力:課題の構造化と仮説構築
- ドキュメンテーション:提案資料や業務設計書の作成スキル
- クライアント対応力:経営層と対等に話すファシリテーション力
メリット
- 業界横断の知識と実行支援スキルが身につく
- 独立やフリーランスへのステップとしても有利
デメリット
- 長時間労働・短納期のプレッシャーが常態化しやすい
- 論理性を極端に重視する風土に馴染めない人は摩耗しやすい
7. 営業マネージャー
仕事内容
営業マネージャーは、営業チームの目標設定、進捗管理、メンバー育成などを担当します。
いわばチームリーダーのようなポジションとも言えます。ここでは、個人プレーヤーから「チームの成果を最大化する役割」へと視点を変える必要があります。
メンバーのKPI改善や戦術立案が求められるポジションです。
必要スキル
- マネジメント力:目標管理・1on1・フィードバック施策
- 数字管理力:営業KPIのモニタリング・課題分析
- 戦略思考:業界トレンドを踏まえた中長期戦術の構築
メリット
- 組織成果に直接インパクトを与える役割としてやりがいが大きい
- 管理職登用により報酬や裁量が大幅に増加
- 部門長や営業本部長へのキャリアパスが明確
デメリット
- プレイングマネージャー化しやすく、負荷が倍増することもある
- メンバーの離職やモチベーション管理が大きなストレス源になる場合あり
8. カスタマーサポート/テクニカルサポート
仕事内容
既存顧客からの問い合わせに対応する職種で、トラブル対応・仕様説明・使い方のレクチャーなどを行います。
IT業界では技術サポートやFAQ整備を担うテクニカルサポートの重要性が高まっており、エンジニアと顧客の橋渡しとして活躍します。
必要スキル
- ヒアリング力:課題の背景を正確に把握する対話スキル
- 問題解決力:問い合わせを的確かつ迅速に解消する対応力
- テクニカル知識:仕様やシステム理解の基礎
メリット
- 顧客満足に直結し、ブランド信頼性向上に寄与できる
- 営業経験者なら、問い合わせの背景を読み取る力に優れる
- 未経験でもITリテラシーがあればチャレンジ可能
デメリット
- 対応件数が多く、定型対応に近い作業も増える
- クレーム処理や緊急対応などストレス耐性が問われる
9. 人材育成/研修企画
仕事内容
新人研修から管理職研修まで、社内の人材開発戦略に基づいた学習設計・コンテンツ作成・実施が主な業務です。
必要スキル
- 教育設計力:学習効果の高い研修構成の立案スキル
- ファシリテーション力:研修講師としての場づくり・対話力
- コンテンツ制作力:eラーニングなどの教材作成スキル
メリット
- 自身の経験を組織貢献として活かせる
- 組織文化にポジティブな影響を与えることができる
- 経営陣やHR部門との接点も多く、評価されやすい
デメリット
- 定量的な成果が見えにくく、評価軸が曖昧な場合がある
- 教育効果は長期的なものが多く、即効性は乏しい
10. 起業/フリーランス
仕事内容
法人営業で培ったネットワークや提案スキルを武器に、独立・起業という選択肢もあります。
BtoB向けの営業代行、マーケティング支援、コンサルティングなど、多岐にわたるビジネスモデルが存在します。
必要スキル
- 自己管理力:タスク設計、スケジュール管理、体調管理
- 集客・営業力:自身で顧客を開拓する能力
- 財務・法務知識:契約書管理・経費処理・確定申告対応などの基本スキル
メリット
- 自分の裁量で仕事ができ、報酬や時間も自由に設計可能
- 事業が軌道に乗れば法人化や雇用創出も視野に入る
デメリット
- サポート体制がなく、全てを自分で抱える必要がある
- 初期は収入が不安定で、自己投資・資金管理が鍵となる
カスタマーサクセス、アカウントマネージャー、BizDev、PM、マーケ・コンサル・マネージャー、人材育成、起業など、法人営業経験者のポータブルスキルを活かせる10の代表的職種を一挙紹介しました。
転職成功のポイントとは?
続いて、長期的なキャリアパスを実現するための転職成功に向けたポイントをご紹介します。
スキルの言語化とエピソードの明確化
転職活動で重要なのは、あなたのスキルや成果を「他人が理解できる言葉」で伝えることです。
単なる実績の羅列ではなく、「成果 × ストーリー」で語ることが聞き手の納得感につながります。
たとえば、
「新規開拓で年間○億円の売上を達成」
「大手顧客向けに提案書を再設計し、プロジェクト導入までの期間を△%短縮」
「営業フローを自動化し、チーム全体の提案効率を1.5倍に改善」
こうした成果は、数値と背景(なぜ・どうやって)のエピソードがセットで初めて相手に響くはず。特に異業種・未経験の転職では、業界用語に依存せず、「どの業界でも通じるスキル」として言語化する視点が求められるでしょう。
📌面接対策の準備段階から、「自身の成果リスト」や「成功ストーリー集」を作っておくと、応募時のカスタマイズや練習にも役立ちます。
エージェント活用と徹底した情報収集
転職活動はまさに「情報戦」です。
求人票だけではわからない“裏側”の情報を得るには、信頼できる情報源との接点が欠かせません。とくにキャリアパスを意識した転職活動ならなおさらです。
参考までに、わたしが過去の転職活動で利用したサービスを代表例で記載します。
- 業界特化型エージェント(例:営業職専門、IT未経験支援など)
- スカウト型サービス(ビズリーチ、リクルートダイレクトスカウトなど)
- OB/OG訪問(LinkedInやXでのDMなども有効)
- 社員口コミサイト(OpenWorkなどを活用)
エージェントとの面談では、希望条件の押し付けよりも「転職の背景」や「長期ビジョン」を正直に共有する方が、質の高い提案につながるでしょう。
時にはエージェントを複数活用することもオススメです。
📌エージェントも人ですから当たり、外れがあります。
面接対策と事例準備
面接では、「何ができるか」よりも「これまで何をやってきたか」の再現性を問われます。
その際に有効なのが、SOARフレームです。
- S(Situation):どんな課題があったのか
- O(Objective):あなたの目的・目標は何だったのか
- A(Action):どんな行動を取ったのか
- R(Result):結果どうなったのか(数字で示す)
たとえば、
S:「リード数はあるが受注率が低い状況だった」
O:「商談初期フェーズでの提案精度向上を狙った」
A:「ヒアリングシートを再設計し、部門ごとの課題整理を徹底」
R:「初回商談後の提案成約率が30%→50%に改善」
この形式で5〜6個のエピソードを事前に用意しておけば、どんな質問にも応用して答えられるようになります。
ぜひ面接前の回答作成に役立ててください。
成果は「数値×ストーリー」で言語化し、複数エージェントとOB訪問で情報を集め、SOARフレームに沿った面接準備を行うことで、転職成功率が大きく高まります。
キャリア選択時の注意点とは?
キャリアを選択するとき、あなたは何らかの不安や不満があって選択肢を探していると思います。
ただし、キャリア選択時の注意点を理解しておかないと取り返しのつかないことになる可能性があります。
以下では注意点をいくつか紹介いたします。
企業文化とのマッチング
給与や職種だけで判断せず、「どんな人が活躍しているか」「評価制度はどうなっているか」「どのくらいの裁量が与えられるか」といったカルチャー面を事前に調査することが重要です。
- OB/OG訪問、XなどSNS検索で実態を把握
- 面接時に「御社で活躍している社員の特徴は?」と質問する
- 「口コミサイト」も積極的に利用(OpenWorkなど)
とくに日系企業から外資系企業への転職。もしくは外資系企業から日系企業への転職は大きなカルチャーショックがあることが予想されます。
念入りに事前のすり合わせを採用担当者と実施しましょう。
長期視点でのキャリアデザイン
目の前の転職成功だけでなく、「その後のキャリアの可能性」まで考慮して選択を行いましょう。
3年後、5年後にどんなポジションにいたいか、そのために今どんな経験を積むべきかを逆算することが大切です。
たとえば、「PMになりたい → 現職では開発チームとの接点がない → 異業種でも開発と近いCSや企画職に転職する」など。
長期視点でキャリアビジョンを描ければ、自然とあなたの言葉にも説得力が増してくるはずです。
年収や職種だけでなく「カルチャー」「裁量」「長期キャリア」を必ずチェック。OB/OG訪問や口コミサイト活用で自社の実態を掴み、3~5年後の目標を逆算して判断することが重要です。
まとめ
本記事では営業職経験者のキャリパスを紹介し、その上でキャリア選択時の注意点などをまとめました。
法人営業の経験は、課題解決力・コミュニケーション力・提案力といった“スキル”の塊です。あなた自身が思う以上にキャリアの幅は広く、異業種・異職種への転職も十分に可能でしょう。
まずは「自分が何を大切にしたいか(価値観)」と「世の中でどんなスキルが求められているか(市場性)」を照らし合わせ、自分なりの“最適解”を見つけましょう。
そして、必要な準備を重ね、着実にステップを踏むことで、納得感あるキャリアの再構築が可能になります。
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