突然ですが、「年収が上がれば自然と貯金が増える」と思い込んでいませんか?
しかし、日本の税制をよく知らないと収入が増えても可処分所得が大きく減ってしまうこともあります。日本の税制を知り、「見えない支出」を可視化することで、手取りを劇的に改善する第一歩を踏み出しましょう。
本記事では、20代後半〜30代後半の会社員が知っておくべき「節税×資産形成」の制度、すなわちiDeCo・ふるさと納税・新NISAを徹底的に解説します。
会社員の平均年収と「手取り」のリアル
まずは日本人の平均年収データを参考とし、実際の手取り金額を計算してみましょう。
日本の平均年収と20代~30代の平均年収データ
国税庁が公表している「令和5年度 民間給与実態統計調査」によると、
- 20代後半(25~29歳)の平均年収は約394万円
- 30代前半(30~34歳)は約431万円
- 30代後半(35~39歳)は約466万円 という水準です。
(出典:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2023.htm)

日本全体の平均給与実態は約460万円、男性平均は約569万円、女性平均は約316万円となります。
そのため、20~30代の平均給与はおおむね日本全体を下支えしています。
ちなみに、男性は60歳未満までは年齢が高くなるにしたがい平均給与も高くなり、55~59歳の階層(712 万円)が最も高くなっていますが、女性では年齢による差はあまり顕著ではありません。
平均年収における税・社会保険料の負担
日本全体の平均給与460万円をサンプルデータとし、所得税や住民税、社会保険料がどれだけの割合で天引きされるかを示したものです。
項目 | 税率/料率 | 計算例 |
所得税(課税所得\3,300,001-\6,950,000) | 20% - \427,500 | 課税所得×20%-\427,500 |
住民税 | 一律10% | 前年所得×10% |
健康保険料(従業員負担・東京) | 約4.99% | 標準報酬月額×4.99% |
厚生年金保険料(従業員負担) | 約9.15% | 標準報酬月額×9.15% |
雇用保険料 | 0.6% | 報酬月額×0.6% |
上記の通り、所得が上がれば住民税や社会保険料も連動して上昇するため、「稼げば稼ぐほど可処分所得の割合は低下する」という逆転現象が起こりうるという実態があります。
結果として、25%前後が”見えない支出”として消えてしまい、「思ったより自由に使えるお金がない」と感じるのです。
日本全体の給与所得は約460万円。所得が上がれば住民税や社会保険料が連動して上昇するため、稼ぐほどに可処分所得の割合が低下するという逆転現象が起こりうる。
会社員がiDeCoを優先すべき理由
平均年収前後(年収400~500万円)の会社員にとって、iDeCo(個人型確定拠出年金)は「合法的な節税策」として強力な味方になります。
まずはiDeCoの制度を簡潔に整理しておきましょう。
iDeCoの基本概要
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、毎月一定額を自分で積み立てし、60歳以降に年金または一時金として受け取る制度です。
2001年10月1日に制度開始され、資産運用における他の非課税制度「NISA(つみたてNISA)」や「新NISA」より長い歴史があります。
iDeCoを利用すれば以下のメリットを得られます。
- 掛金の全額が所得控除される(=課税所得が減る)
- 運用益は非課税
- 受け取り時も控除対象になる可能性あり(退職所得控除や公的年金控除)
この3つの優遇(掛金の所得控除・運用益非課税・受取時控除)のトリプルメリットから、iDeCoは他のどの制度よりも「節税効率が高い」と言われています。
また、iDeCoは年金制度の一種で「自分年金」という位置付けであるため、若いうちから制度を利用しないと投資可能な枠が目減りしていきます。
気になる人は早めに始めるとよいでしょう。
iDeCoが向いている人、不向きな人の特徴
iDeCoは節税効率の高い魅力的な制度ですが、万人にとってベストな選択とは言えません。
ライフステージや収支状況によって向き不向きがありますので、ここでは向いている人と不向きな人の特徴をまとめてみましょう。
あなたが会社員(とくに20代後半〜30代後半)ならば「ド本命」の制度ですが、万一の支出に備えて「生活防衛資金」は確保しておくようにしましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は最も節税効果の大きな選択。メリットは大きく3つ(掛金の所得控除・運用益非課税・受取時控除)あり、自分年金として若いうちから始めることをオススメします。
ふるさと納税は「節税×体験価値」の最強制度

ふるさと納税は、地方自治体に寄附をすることで、翌年の住民税・所得税から控除が受けられる制度です。
実質自己負担2,000円で、自治体からの「返礼品」がもらえる点が最大の魅力。
“寄附したお金が翌年の税金から差し引かれつつ、豪華な返礼品が受け取れる”という、にわかには信じがたい制度となります。
年収別・控除上限額シミュレーション
あなたの年収によって、ふるさと納税で控除できる「上限額」は異なります。
以下は目安です。
※配偶者あり・子ども1人・共働き世帯の場合
年収 | 控除上限額(目安) |
---|---|
500万円 | 約6.1万円 |
600万円 | 約7.7万円 |
700万円 | 約9.0万円 |
たとえば、年収500万円で6.1万円の寄附をした場合、「59,000円相当の返礼品+翌年の税金軽減」という実質大勝利が可能です。
利用する際のポイントと思わぬ落とし穴
【メリット】
- 食品・日用品など“生活費の代替”として使える
- 地域特産品で旅行気分を味わえる
- ワンストップ特例制度で確定申告不要(5自治体以内)
【注意点】
- 控除上限額を超えると自己負担が発生
- 年収に応じた計画が必要
- 寄附金額と返礼品の還元率は年々厳格化されている
私も過去5年間ほど活用し、日用品(トイレットペーパーや米)・果物・冷凍食品などで「生活コストの圧縮」と「ちょっとした贅沢」の両立を実現しています。
参考までにわたしが毎年選んでいる返礼品をご紹介させていただきます。

- 生活用品を購入する手間が省ける
- ボリュームがたっぷりで外箱もしっかり
- 1年分の生活用品が手に入る
- 保管場所に困る

- 乳製品をお得に入手できる
- 普段は買えないクオリティのバターが手にはいる
- 朝食が毎日楽しみになる!
ふるさと納税は実質負担額2,000円で自治体からの返礼品が受け取れる”お得な制度”。
ぜひ、楽天市場やふるさとチョイスなど、色々なサイトを見てみましょう。
新NISAは長期・分散が原則の王道な資産運用
2024年から、NISA(少額投資非課税制度)は「新NISA」として刷新されました。
つまり、長期・分散投資をする上では「iDeCoで節税」「NISAで運用効率アップ」という“ゴールデンコンビ”が可能になったのです。
旧NISAと新NISAの比較
比較項目 | 従来NISA | 新NISA(2024年〜) |
年間投資上限額 | 一般NISA:120万円 つみたてNISA:40万円 | つみたて投資枠:120万円成長投資枠:240万円 |
非課税期間 | 一般NISA:5年 つみたてNISA:20年 | 永続(無期限) |
投資対象 | 一般NISA:株式・ETF・投資信託 つみたて:特定投信 | つみたて枠:長期分散投資向け投信成長枠:ETF・個別株・REIT・投資信託 |
総非課税枠 | 制限なし(ロールオーバー可) | 最大1,800万円(成長投資枠1,200万円+つみたて枠600万円) |
ロールオーバー | 可能(非課税期間終了後の再投資) | なし(非課税期間が無期限のため不要) |
投資信託・ETF・個別株など何を買うべきか
新NISAは2つの投資枠を組み合わせ、合計1,800万円を非課税で運用します。
1.つみたて投資枠(年間120万円)
つみたて投資枠は「長期・積立・分散」に適した投資商品のみを取り扱っています。
2025年時点では「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」または「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が人気です。
2.成長投資枠(年間240万円)
成長投資枠はETF・個別株・REITなどの多彩な投資商品から自由にカスタマイズすることが可能。
私の場合は長期的な資産形成(運用益非課税)を最大化させる目的でつみたて投資枠と同じ、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)へ投資を行っております。
新NISAは運用益非課税のメリットが大きな制度。
iDeCoとうまくバランスを取って資産形成を加速させよう。
実際にやってみて感じたハードル
制度を知っても、手続きの煩雑さや家族の理解などがハードルになることもあります。
ここでは、実践して初めてわかった壁とその解決策をお伝えします。
家族の同意と生活防衛資金の準備
ふるさと納税の寄附額やiDeCoの拠出額は、家計にも影響します。
家庭持ちの場合は事前に配偶者や家族と話し合い、年間予算を共有しましょう。
- 生活防衛資金:給与6ヶ月分を別口座にキープ
- 家計会議:制度のメリットと自己負担額(2,000円など)を可視化
我が家は旦那である私が家計管理を主にやっているのですが、収支も含めて長期的な取り組みであることをパートナーに理解してもらっています。
場合によってはパートナーと一緒に始めることで家計へのリターンを最大限まで引き出せるでしょう。
情報量の多さに伴う心理的な障壁
本記事で取り上げた「iDeCo」「ふるさと納税」「新NISA」はどれも専門用語だらけで、これから始めようと考えている初心者には敷居の高さを感じさせることでしょう。
社会人一年目など、何から始めたらよいのかわからない場合には、まず証券口座を開設することをオススメします。
証券口座があれば、iDeCoや新NISAの下準備を進めることができるでしょう。
ふるさと納税は普段の買い物(イーコマース)と変わらないため、こちらは手続きさえ忘れなければ、今すぐにでも始めることが可能です。
まとめ
最後にこれまで紹介した制度を使いこなすためのマインドセットと、具体的なアクションプランをご紹介します。
税金を“戦略的に活用”する
- マインドセットの転換:納税者視点から資産形成者視点へシフト
- 行動優先:知識を得たら、翌月中に必ず1つ制度を試す
制度 | 主なメリット | 向いている目的 |
---|---|---|
iDeCo | 所得控除+運用益非課税 | 老後資金の長期積立 |
新NISA | 運用益非課税 | 中長期の資産形成・株式運用 |
ふるさと納税 | 税控除+返礼品 | 年間生活費の一部軽減+娯楽 |
3ヶ月・6ヶ月のアクションプラン
期間 | やること |
今月 | – iDeCo口座の資料請求- ふるさと納税サイト登録 |
3ヶ月後 | – NISA口座開設- iDeCo掛金設定完了 |
半年後 | – 新NISAで初回投資- ふるさと納税返礼品到着 |
長期的な視野での資産形成の真価
- 複利効果:制度を使い続けるほど運用益が膨らむ仕組み
- 心の余裕:節税体験が生む精神的な安心感
- 将来設計:老後資金・教育資金など目標設定のベース
この記事が、あなたの“最初の一歩”になることを願っています。
まずは理解した制度を試し、可処分所得を最大化しながら、安心できる未来を築いていきましょう。
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