「配当が減らない安心感」って、投資家にとって無視できない魅力ですよね。
特に長期保有を考える個人投資家にとって、減配リスクの低い銘柄は心理的にも大きな支えになります。
その想いに応えて誕生したのが「累進配当」という配当方針。
本記事では、制度の定義から各方針との違い、個人投資家が気を付けるべきポイントを解説します。
1.累進配当の定義と基本構造
累進配当とは
累進配当とは、企業が配当を減額せず、維持または増額する方針を明示的に掲げる配当戦略のことです。
重要なのは「増配する」という実績よりも、「減らさない」という方針を制度として約束している点です。
特徴
- 減配は原則行わない
- 利益が増えれば配当額も増加する可能性が高い
- 株主への信頼維持を重視
2.累進配当と「高配当」「連続増配」との違い
高配当株との比較
- 高配当株:配当利回りが高い銘柄(例:3%以上)
- 累進配当株:配当水準を維持・増加する方針を宣言している銘柄
→ 高配当株は現在の利回りが基準。累進配当は将来の安定性が基準。
連続増配株との比較
- 連続増配株:実際に毎年配当を増やしている実績を持つ
- 累進配当株:方針として減配を避け、増配を志向
→ 連続増配は実績重視、累進配当は制度重視。
違いに関するまとめ
累進配当は「安定した配当を掲げる方針」であり、増配実績が必須ではない点が連続増配との違いです。
用語 | 定義 |
---|---|
高配当株 | 現在の配当利回りが高い銘柄(例:利回り3%以上など) |
連続増配株 | 毎年実際に配当を「増やし続けている」企業 |
累進配当 | 「減らさず維持 or 増配を続ける」配当方針を掲げる企業(方針ベース) |
3. なぜ累進配当は投資家に支持されるのか
1. 減配リスクの低さ
累進配当を掲げる企業は、減配が株主心理に与える影響を理解しており、財務戦略でも配当維持を最優先にします。
2. 長期投資の安心感
累進配当は将来の配当見通しを立てやすく、配当再投資戦略(DRIP)との相性も抜群です。
3. 市場での評価
日経が公表する「日経累進高配当株指数」により、制度としての注目度が上昇。指数採用銘柄は機関投資家の買い需要も高まります。
4. 投資家が注目すべきポイント
1. 方針の有無
企業の中期経営計画やIR資料で「累進配当」の文言があるか必ずチェック。
2. 実績の確認
累進配当の方針があっても実績が伴っているかは別問題。最低でも過去3〜5年の配当推移を確認。
3. 財務健全性
- 配当性向:利益に対する配当割合。高すぎると持続性に疑問。
- DOE(株主資本配当率):自己資本に対する配当の割合。資本効率の観点から有効。
4. 方針変更リスク
累進配当は絶対ではなく、経営環境悪化時には見直される場合があります。
リーマンショック時の減配事例なども知っておくと安心。
5. 累進配当を掲げる企業の動向
実際に「累進配当」を表明している企業は増加傾向にあります。
2025年4月までに247〜270社程度が宣言しており、その多くが銀行や商社など安定した業種です。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 累進配当って本当に宣言する企業が多い?
-
はい、2025年時点で約7%(247〜270社)の上場企業が累進配当を表明しています。
- Q2. 指数にもなってるって本当?
-
その通りです。「日経累進高配当株指数」が該当し、10年以上累進実績がある高配当銘柄30社が選ばれています。
まとめ
累進配当は、単なる「高配当」や「連続増配」とは異なり、原則配当を減らさないことを掲げる配当方針です。
この方針は、投資家にとって以下のような価値をもたらします。
- 心理的な安心感:減配リスクを低減し、長期保有を後押しする
- 将来の見通しやすさ:配当再投資やライフプラン設計に活かしやすい
- 市場での評価向上:指数採用や機関投資家の資金流入の可能性
しかし、累進配当は絶対保証ではありません。
経営環境の悪化や方針変更によって減配される事例も過去には存在します。
そのため、投資家は以下の3ステップで銘柄を見極めることが重要です。
累進配当銘柄を選ぶ3つのチェックポイント
- 方針の明記
中期経営計画やIR資料に「累進配当」の明確な記載があるか確認 - 実績の裏付け
過去3〜5年の配当推移をチェックし、方針と行動が一致しているかを見る - 財務健全性の確保
配当性向やDOE(株主資本配当率)を確認し、長期維持可能な範囲かを判断
あなたが次に投資先を選ぶとき、「高配当かどうか」だけでなく、「累進配当かどうか」もチェックリストに加えてみてください。
参考文献
- 野村證券|証券用語解説「累進配当」 野村証券
- かぶよむ(カブドットコム証券)|「累進配当株とは?高配当や連続増配との違い」 三菱UFJ eスマート証券
- 日本経済新聞インデックス|「日経累進高配当株指数(愛称:しっかりインカム)」概要・ルール 日経インデックス
- note「アクティビストのことが本当に少しだけ分かるブログ」|累進配当表明企業の集計(約267社・2025年時点の試算) note(ノート)
- 野村證券|証券用語解説「株主資本配当率(DOE)」 野村証券
- SMBC日興証券|用語集「DOE/株主資本配当率」 SMBC日興証券
- 大和証券|金融・証券用語解説「DOE/株主資本配当率」 大和証券+1
- 企業のDOE運用例(DOE下限を明示)|野村不動産HD「配当・株主還元」 野村不動産ホールディングス 公式ウェブサイト